GPS単独測位について

2023.06.09 | GNSS測位

GPS衛星を使用した測位の基本的な方法は、自身のアンテナから衛星までの距離を測定し、その衛星の位置から取得した距離だけ離れた場所にアンテナが存在する、として計算することです。
その正確な距離が分かっていれば、衛星の位置を中心とし、距離を半径として球をイメージします。
その球のどこかに、自身のアンテナが存在するはずです。
そして、数式を使用して三次元の位置を求める必要があるなら、x座標, y座標, z座標の変数3つを計算で求める必要がある為、3つの衛星の球を用意することになります。
つまり、方程式を3式作成することになります。

自分の求めたい座標 (x, y, z)

3つの衛星の既知の座標:(衛星1x, 衛星1y, 衛星1z), (衛星2x, 衛星2y, 衛星2z), (衛星3x, 衛星3y, 衛星3z)
3つの衛星までの距離 :距離1, 距離2, 距離3

3衛星の座標と距離

衛星の座標は、衛星からの電波に含まれる情報により計算出来る値です。そのため既知です。
それとは異なり衛星までの距離は、観測・測定する値です。そしてこの測定する方法の違いが、求めたい自分の座標の精度に影響を与えます。
いずれにしても、
(x – 衛星1x)2 + (y – 衛星1y)2 + (z – 衛星1z)2 = 距離12
(x – 衛星2x)2 + (y – 衛星2y)2 + (z – 衛星2z)2 = 距離22
(x – 衛星3x)2 + (y – 衛星3y)2 + (z – 衛星3z)2 = 距離32

この3式があれば3つの変数(x, y, z)は求められ、その変数の座標は、3つの衛星の球の交わり部分となります。
ただ実際には、衛星までの距離を測定する過程で使用する「時間」のデータも変数tとおき、方程式の4つ目の変数として式を作成しています。

3衛星の座標と距離+時間

つまり、方程式を4式作成し、4つの変数(x, y, z, t)を求めます。受信機の時間が、衛星の時間ほど精密でないためずれがあり、かつ、時間を測定することで距離を求めているからです。
(x – 衛星x)2+(y – 衛星y)2 + (z – 衛星z)2 = (測定距離+時間誤差t×光速度)2

4衛星以上の捕捉が必要ということになります。

 

<衛星からの時刻を利用した単独測位>

距離の測定は、アンテナで受信した衛星からの信号データが、「衛星からいつ発射されたか」、そして「いつアンテナが受信したか」を計測し、その差分(移動時間)に電波の速度(光の速度)を掛ければ、計算することが可能です。
「いつアンテナが受信したか」については、受信機側の時計で取得可能です。
「衛星からいつ発射されたか」については、信号データは、衛星からの発射時刻を含んでいますので、データの中身を抽出出来れば取得可能です。
しかし残念なことに、この衛星からの発射時刻が、まったく細かくありません。
GPSの信号データは50ビット/秒のデータです。1秒で50ビット、つまり1ビットの間隔は0.02秒です。単純に考えて1ビットのデータでは0か1しか表現できませんので、時間を表現しようと思うと、4バイト以上は必要になりそうです。しかし仮に、0か1の1ビットで時間を表せたとしても0.02秒×光の速度 が 0.02秒 × 300,000km/秒 = 6,000kmですので、時刻が1メモリ(0.02秒)変わると6,000km変化します。そのため、データに含まれる時刻を使用して移動時間を計算する方法では、正確な距離は求められません
実際は、移動時間を別の方法で算出しています。

 

<衛星からのコードを利用した単独測位>

GPS衛星は地球の周りを30機近く飛んでいます。その30機のGPS衛星それぞれは、他の30機のGPS衛星と同じ周波数の電波で、そのGPS衛星が出力したいデータを地球に向けて発射しています。ただ、その30機からの電波を1つのアンテナで受信する場合には、当然、合成された電波を受信することになります。

単独即位の電波受信

実際には、地球の裏側に飛んでいるGPS衛星からの電波はアンテナには届きませんので、アンテナの上空にある10機程度の電波だけが合成されて(重なってしまって)アンテナに届くことになります。
この合成されてしまった電波を、GPS受信機は、GPS衛星ごとのデータとして分離して利用します。
それが出来るのは、CDMA(Code Division Multiple Access:符号分割多元接続)という技術を利用しているからです。
GPS衛星は自身が出力したいデータに、GPS衛星ごとに決まったコード(1023ビット/0.001秒周期)を掛け合わせて、実際に送るデータを構成(拡散という)したのち、電波として発射します。
そして、そのCDMAで構成された電波は、たとえ空間で合成された状態になったとしても、GPS受信機側でGPS衛星ごとに決まったコードを掛け合わせること(逆拡散という)で、そのGPS衛星のデータを取り出すことが出来ます。
(CDMAは、携帯電話の第3世代(3G)で使用されている技術です。)

このGPS受信機側の計算の過程で、GPS受信機が発生させた1023ビットのコードと、GPS衛星の電波に含まれた1023ビットのコードのずれを確認し、電波の発射からその電波の到着までの移動時間を計算しています。
0.001秒÷1023ビットが、1ビットのデータ転送にかかる時間ですので、1ビットで(0.001÷1023)秒 × 300,000km/秒 ≒ 約300m変化します。
仮に1ビットを100分の1の分解能で認識出来るとしても、約3mの変化があります。
つまり、コードを使用した距離の計測では3m程度の精度のため、GPS受信機一台を使用した座標測位では、数mのずれが当然存在します。これを、コードを利用した単独測位といいます。

GNSS測量の分類

次回に続く・・・。