VRSの測位結果が元期座標になる件

日本テラサットの配信データを使用してRTK-VRS測量をされるお客様から、
「RTKの結果は、今期ですか?元期ですか?」とよく聞かれます。
今回のコラムは、その今期座標か元期座標かについて、お話します。

回答:『日本テラサットの配信データを使用してVRSを行った場合のRTKの結果は、元期座標です。』

日本テラサットではそのようにしています。
元期座標でRTKの結果が算出された方が便利(楽)と考えるからです。
お客様の先で算出された座標に手を加えなくても(難しい計算をしなくても)、そのままで既存の地図・成果座標に整合するからです。

今期座標と元期座標について ->

回答は既にお話したとして、ここからは、VRSシステムの内部に視点をおいてもう少し詳しく説明します。

VRSシステムからコントローラへ、データを配信するイメージ

 

日本全国を網羅している電子基準点は、24時間365日ずっと測位衛星を捕捉し、毎日、WGS-84楕円体上での座標を計算しています(緯度・経度・楕円体高とか地心座標とか)。
これが、いわゆる電子基準点の日々の座標です。

尚、日本では、WGS-84楕円体とほぼ同一と考えられているGRS80楕円体-ITRF座標系を使用しています。

そして、日本テラサットでは、VRSシステムで管理している電子基準点の座標として、直近1カ月程度の日々の座標平均値を使用しています。
これを日本テラサットでは、元期座標と対比し今期座標(国土地理院では年度単位で計算)としています。

その結果、日本を網羅する今期座標の電子基準点網がVRSシステム内に構成されます。

VRSシステム内の今期座標での電子基準点網

VRSシステムには、配信データを望むユーザから仮想基準点の座標が送られてきます。
VRSシステムは、その座標を元期座標とみなし保有します。そして、その座標からシステム内部で使用するための今期座標を計算します。
そのことで、今期座標での電子基準点網内のどの部分に、仮想基準点を作成すべきかが分かります。
ここが特に重要ですが、システム内部は、経年劣化という概念のない座標である今期座標を使用していますので、VRSシステムに送られてきた座標(位置)は、電子基準点網内で周りの電子基準点からの距離及び方向で正しく表現できます。

結果、その位置の仮想基準点データを品質良く構成することが出来、その配信を受けるユーザの受信機が早くFIXすることにつながります。
このFIXで、仮想基準点からユーザのアンテナまでのベクトル計算の準備(行路差算出まで)が完了していますので、後はユーザのアンテナ位置を求めるだけとなります。

①ユーザがVRSシステムに、元期座標の仮想基準点の座標を送る
②VRSシステムが、①で渡された仮想基準点の座標から、今期座標を計算する
③VRSシステムが、②の今期座標の位置に仮想基準点データを構成し、配信する
④ユーザ受信機が、自身の衛星捕捉データと配信データ(③配信データ(イメージ)の青データ)を組み合わせ計算し、FIXする
⑤ユーザ受信機が、配信データに含まれる元期座標の仮想基準点の座標(③配信データ(イメージ)の緑データ)と④のFIXデータを使用してベクトルを求める
(ベクトルの始点が、元期座標・今期座標程度の小さな違いぐらいでは、計算結果であるベクトルの方向・長さに影響を与えない。)

結果、ユーザのアンテナ位置が元期座標で求まる、ということになります。

配信データの流れ

少々くどくなりましたが、今回は、『日本テラサットのVRSの結果が元期座標として求まる』についてお話しました。